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神戸地方裁判所 昭和62年(わ)470号 判決 1987年11月12日

本籍

神戸市中央区元町通三丁目九番地

住居

同市北区南五葉六丁目七番一四号

飲食店経営

大西一男

昭和一七年二月一四日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官柳瀬治夫出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月及び罰金一、五〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

本裁判確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、神戸市中央区元町通三丁目九番二一号において大衆酒場「元町通松屋」、同区布引町四丁目一番一号所在の日本国有鉄道(現西日本旅客鉄道株式会社)三ノ宮駅構内においてうどん店「まつや」等の飲食店を経営していたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、

第一  昭和五八年分の総所得金額は八、四一四万五、六五六円で、これに対する所得税額は四、五九六万九、〇〇〇円であるにもかかわらず、売上の一部を除外し、かつ、前記「うどん店まつや」の経営者は妻大西葉子であるよう仮装して、同人名義で所得税確定申告書を提出するなどし、これによって得た資金を架空名義の定期預金にするなどの行為により、所得金額のうち七、四九三万五、四一六円を秘匿した上、昭和五九年三月一五日、同区中山手通二丁目二番二〇号所在の所轄神戸税務署において、同税務署長に対し、昭和五八年分の所得金額が九二一万二四〇円で、これに対する所得税額は一七三万六、一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により昭和五八年分の正規の所得税額四、五九六万九、〇〇〇円との差額四、四二三万二、九〇〇円を免れ

第二  昭和五九年分の総合課税の総所得金額は七、二一八万八、三五七円、分離課税の短期譲渡所得の金額は一一七万一、四三四円で、これに対する所得税額は三、六七九万七、一〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、所得金額のうち六、四〇二万七、九八一円を秘匿した上、昭和六〇年三月一五日、前記神戸税務署において、同税務署長に対し、昭和五九年分の所得金額が九三三万一、八一〇円で、これに対する所得税額が一六三万五、八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により昭和五九年分の正規の所得税額三、六七九万七、一〇〇円との差額三、五一六万一、三〇〇円を免れ

第三  昭和六〇年分の総所得金額は五、八二九万三三〇円で、これに対する所得税額は二、六七四万七、九〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、所得金額のうち四、六七七万七、九二〇円を秘匿した上、昭和六一年三月一五日、前記神戸税務署において、同税務署長に対し、昭和六〇年分の所得金額が一、一五一万二、四一〇円で、これに対する所得税額が二三五万七、四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により昭和六〇年分の正規の所得税額二、六七四万七、九〇〇円との差額二、四三九万五〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人の当公判廷における供述並びに検察官に対する供述調書五通及び大阪国税局収税吏大蔵事務官(以下単に大蔵事務官という)の被告人に対する昭和六一年九月一一日付、同月一六日付、同月二四日付、同月二九日付、同年一〇月七日付、同年一一月二一日付二通、同年一二月八日付二通、同月一七日付、昭和六二年一月一三日付二通、同月二七日付、同月二八日付、同年二月二三日付二通、同月二七日付、同年三月二五日付各質問てん末書

一  大西葉子の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官の同人に対する質問てん末書二通

一  大蔵事務官の中垣彪(昭和六一年九月一一日付)、岩佐正美(二通)及び浜崎智子(三通)に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の査察官調査書九通

一  検察事務官作成の「三ノ宮駅の所在地及びその名称について(報告)」と題する書面

判示第一及び第二の各事実につき

一  大蔵事務官の山岸勉に対する昭和六一年一二月一日付質問てん末書

判示第一の事実につき

一  神戸税務署長作成の証明書二通(検甲二号及び九号)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検甲三号)

判示第二の事実につき

一  神戸税務署長作成の証明書二通(検甲四号及び一〇号)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検甲五号)

一  大蔵事務官の山岸勉に対する昭和六一年九月一一日付質問てん末書

判示第三の事実につき

一  神戸税務署長作成の証明書二通(検甲六号及び一一号)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検甲七号)

一  大蔵事務官の佐藤安弘に対する質問てん末書

(法令の適用)

罰条

いずれも所得税法二三八条(懲役と罰金を併科)

併合罪加重

懲役刑につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重)

罰金刑につき同法四五条前段、四八条二項

労役場留置

同法一八条

懲役刑の執行猶予

同法二五条一項

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 近藤道夫)

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